自衛隊は、2000年に発生した中央省庁ホームページ改竄事案を機に、陸上自衛隊の電算機システムをサイバー攻撃から防護することや関連情報に関する調査研究を主たる任務とする「システム防護隊」を設立。そして2014年3月には防衛相直轄の「サイバー防衛隊」を新編し、自らの情報システム・ネットワークに対するサイバー攻撃発生時の対処を24時間体制で実施している。また、国境を越えるサイバー攻撃に対しては、関係省庁や国際機関との協議を通じて、情報共有などの連携を進めています。
ただ、陸自部隊の任務では、中央でサイバー攻撃を検知できない場合が想定され、対応策が課題になっていました。そこで新たに、南西諸島防衛の強化策の一環として「西部方面システム防護隊」が地方に初めて創設されることになりました。
南西諸島防衛の強化策の一環として「西部方面システム防護隊」創設
防衛省は来年3月末、九州・沖縄を担当する陸上自衛隊西部方面隊(熊本市)にサイバー攻撃への対処を担う「西部方面システム防護隊」を創設する。東シナ海で活動を活発化させている中国を念頭に置いた南西諸島防衛の強化策の一環。通信の安全性確保が目的で、地方にサイバー専門部隊を置くのは初めてとなる。
防護隊は、西部方面システム通信群の下部組織として約40人態勢で発足。陸自が有事や災害現場で使用する無線の野外通信システムに対するサイバー攻撃への対処が主な任務となる。
防護隊新設の背景には、西部方面隊の管轄地域に離島が多く、自衛隊の通信インフラが確立されていないことがある。自衛隊はインターネットに接続可能な「オープン系」と秘匿性の高い情報を扱う「クローズ系」の2種類の通信回線を併用している。離島では無線を通じてクローズ系にアクセスする必要があるが、その際にシステムに侵入される危険性が指摘されている。
こうしたリスクを未然に防止し、離島に部隊を展開した際にも安全な通信網を確立する。独立組織とすることで現場への要員派遣が迅速に行える長所もある。防衛省は今後、他の方面隊への部隊設置も検討する。
2014年に発足した「サイバー防衛隊」の執務室(写真 : 防衛省)
▼近年の国内外での安全保障に係る大規模なサイバー攻撃
▼サイバーセキュリティを「安全保障上の重要な課題」とした諸外国
西部方面隊は、中国公船の領海侵入が相次ぐ沖縄県・尖閣諸島の防衛を担任。新たなシステム防護隊の創設は、サイバー戦力の増強を進める中国を見据え、南西諸島を管轄する西部方面隊の体制を強化することが狙いとなっています。
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