消防・救急隊は、守ってくれる当たり前の存在ではない

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消防署へ寄せられたクレーム

災害や事故・事件発生時に真っ先に現場に駆けつけて、危険を顧みず消火活動にあたる消防隊、必死に病院に救急車を走らせる救急隊、そして地域のために仕事と家庭と消防活動を両立させている消防団の皆さんの日頃の活動と勇敢な姿には頭が下がります。(消防士は地方公務員ですが、消防団は準公務員で、ほとんどがボランティアで構成されています) しかし、そのような国民の生活を守る活動に対して、一部の市民からクレームが入ることがこれまで何度も話題になりました。

 

・「消防車がうどん店にあった。おかしくないか」と写真付きで愛知県一宮市の消防団員に対してクレーム。

・「救急隊員が自販機で飲み物を買っていた!勤務中なのにおかしい!」と、大阪市のウェブサイトに、救急隊員の行動に対する市民の意見が寄せられる。

・猛暑による救急出動が続き署に戻れないことがあるとして、「水を買うため救急車でコンビニ寄ります」と名古屋市消防局が市民に理解求める。

・スーパーや弁当店の近くに消防車を停めていたら、「消防車で購入していいのか」「邪魔」と注意される。

・音が迷惑だから土日の午前中はエンジンをかけての訓練は禁止、サイレンも大通りに出るまでは減音モード。

 

一部の市民からのクレームですが、地域を守る人たちに対する感謝と理解はないのでしょうか。地域によっては、警察官がコンビニで買い物することも自粛されていたようです。このような『過度な配慮』や『理不尽なクレーム』は、消防士や救急隊員といった人命救助に関わる人たちを苦しめて、現場の士気や効率を低下させてしまいます。

 

このような理解しがたいクレームは無視すればいいようにも思えますが、消防の上部組織は警察や自衛隊と違って市町村であり、クレーマーも有権者にあたるので丁寧に対応せざるを得ないのだということです。

 

 

隊員には最大の敬意と感謝を

米国では、誰よりも早く現場に駆けつけることから「ファースト・レスポンダー」FR(最初の対応者)と呼ばれていて、彼らには最大の敬意と感謝を表します。軍人や消防士など、有事に現場に駆けつける人たちは地域のヒーローとして尊敬されています。警察官や消防隊員がスーパーで買い物や雑誌の立ち読みをしたりするのは日常的で、軍人がコーヒーショップにいたら、誰かがその支払いを済ませてしまうこともよくあります。どこの国だろうと危険を顧みず誰かを助ける行為には最大の敬意と感謝を表すのは当然のことであり、そして市民との触れ合いが、巡回も兼ねた犯罪の抑止と地域の防災力の向上に繋がっているのです。

 

 

東京の救急出動件数、8年連続過去最多

2017年の救急出動件数(速報値)は、前年比1.0%増の78万5240件で、8年連続で過去最多を更新した。救急搬送者の過半数は入院を要しない軽症者だった。

出場件数は2010年に70万件を突破し、その後も年々増加を続けている。全搬送者数は69万8861人。年代別に見ると「75歳以上」が37.6%、次いで「60~74歳」18.6%でうち65歳~74歳が14.2%。65歳以上の高齢者が51.8%となっている。搬送者の初診時の軽症者の割合は54.1%。前年比0.8ポイント減だが、依然過半数を占めている。平均現場到着時間は前年比11秒減の7分19秒で、3年連続短縮した。

平成29年中の救急出場件数が過去最多を更新(東京消防庁)PDF

 

この発表は2017年までのものですが、今年は熱中症による急患が多発しているので、1日あたりの件数が更新されてしまいました。

東京消防庁は、22日の救急出動が3125件(速報値)で、1日の件数としては救急業務を開始した昭和11年以降で最多になったと23日明らかにした。これまでは21日の3091件(同)で、今季4度目の記録更新となった。熱中症の疑いによる搬送が相次いだためとみられる。

救急出動、1日の件数、最多更新 東京消防庁、熱中症要因か(sankei news)

 

守ってくれる、当たり前の存在ではない

現状、消防・救急隊の増加には限界があり、救急態勢が切迫しています。いつでも電話をすれば助けに来てくれるというような状況ではないのです。24時間365日体制の激務は並大抵のことでは勤まりません。任務に就く隊員たちも、命や体を張らなくてもいいように、日々訓練やトレーニングをこなし、知識を蓄えるために最大限の努力をしているのです。しかしそこを理解しないと、前述のクレーマーのように、当たり前のように『消防=いつでも守ってくれる存在』という安易なイメージをもつ人も出てくるのかもしれません。

 

実際に消防関係の方々と話す機会があるのですが、公務員として、自分たちからの宣伝広報には限界があるようです。公的機関が自ら大々的にPRすることはないので、私たち民間の力で、地域の安全を守る人たちを見かけたら直接感謝の気持ちを伝えていきましょう。私たちにできることは、消防・救命の活動を、もっと身近な存在として理解することです。

 

日本でももっと消防士が憧れの職業となるように、消防車や救急車を見たら、「お疲れさま、ありがとう」と心から感謝をして、彼らの活動に誰もが参加できるようになればいいと思います。全国各地の消防で啓蒙活動に力を入れていますので、近くの消防署でイベントなどがあればぜひ参加してみてください。

 

 

 

(photo: 産経ニュースより引用)

(photo: 東大阪市HPより引用)

(全国消防イメージキャラクター「消太」)

 

 

 

(photo: 産経ニュースより引用)

 

 

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